私は高杉晋作

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私は高杉晋作

頭がおかしいと言う人が「頭がおかしい」

【コラム】なぜ働くのか?なぜ仕事をするのか?の本当の理由を考える

なぜ働くのか?」「なぜ仕事をするのか?」という問いがある。

 

あなたは就職活動を控える大学生から聞かれたらなんと答えるだろうか?

 

 

「お客様の笑顔が見れるからです。」

「社会の一員として勤めを果たすためです。」

「この仕事が生きがいだと感じたからです。」

「社会のより良い発展のためにです。」

 

 

こういうヘドが出るような綺麗事が世の中で横行するから現代の病は奥が深いなといつも私は思っている。

 

こういうことを言うと叩かれるかもしれないが、そういった偽りは結局自らを苦しめるだけでしかないと言わせて欲しい。

 

 

 

今日は、「なぜ働くのか」に対する私が考えるリアリティを述べつつ、そこから見える社会の病を考察したい。

 

  1. なぜ働くのか」の本当の理由
  2. 消費のために生産をするのか。生産のために消費をしているのか?
  3. 何かがおかしいと思わないか?

 

1.「なぜ働くのか」の本当の理由

私がこの問いに対して考える解は「生命を再生産するため」というものである。

 

平たく言えば、「金のため」なのだがその言い方をすると本質が見えにくくなるので、私自身は「生命の再生産」という表現の使用を行う。

 

 働く目的は何か聞いたところ,「お金を得るために働く」と答えた者の割合が51.0%,・・・

国民生活に関する世論調査 2 調査結果の概要 3 - 内閣府

 

 

実は、こういった実態調査においてはある程度本音は出てくるのだ。

それでも半分の人間は綺麗事にこだわっているようだが、、、、

 

 

この調査結果は、「生きるために生きている」(生命の終着点なき再生産をする)人間が世の中に溢れかえっていることを示している。

 

 

 

 

 

今、私が話していることはあまりに当たり前のことすぎるように見えるかもしれない。

そして、あなたは「何を今さら」と思っているかもしれない。

 

 

 

 

確かに、その考えに私は反対はしない。むしろその考えは正しいとさえ思う。

 

 

ただ、ここで「思考停止」することを私は是としない。

「当たり前」という言葉は時に暴力的だ。

 

 

 

もちろん「思考」したからといってその状況を即座に超克できるわけではないのだが、我々が縛られている「偏見」の正体を掴むことで、何かを変えうる兆しに成り得ることがあると思うのだ。 

 

「思考を続けること」こそ「人間らしさ」を失わない唯一の方法だと私は思っている。

 

 

 

では、何を私は「思考停止」と呼んでいるのか。

それは、「生命の維持」こそが「緊急かつ重要なこと」だという盲目的イデオロギーに多くの人がしばられていることである。(偉そうなことを言いつつ私も縛られている。)

 

 

 

ブログでは繰り返し述べているが、このイデオロギーは産業革命以降デカルトが無意識的に生み出したものはなのだがデカルトを知らない人をも蝕むくらいに破壊力は凄まじい。

 

 

 少しだけ説明をしよう。

 

デカルトによる「我思うゆえに我あり」がもたらしたあらゆる対象への「懐疑」は形而上学的な「信仰」を破壊した。

 

これにより人々は「来世」(不死)への確かさを失った。

 

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近代になって、世俗化の過程が進み、デカルト的懐疑が必然的に信仰を奪ったため、個体の生命は、もはや不死ではなくなり、少なくとも、不死の確かさを失った。このようなことが起こらなかったとしたら、<労働する動物>の勝利は決して完成しなかったであろう。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 

来世への確かさを失うとなぜ「生命の再生産」に人々は走るのか?

それについてはアレントが以下のように述べる。

 

近代人は、来世の確かさを失った時、自分自身に投げ返されたのであって、世界に投げ返されたのではなかった。彼らは世界が潜在的に不死であるということを信じるどころか、世界が現実的なものであることにさえ確信が持てなかった。確かに近代人は、着実に進歩する科学の見るからに悩みのない無批判的なオプティミズムによって、・・・地球から遠い地点に移動した。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 

 

ここの解釈は結構難しい。

ただ、私なりの解釈で述べていきたい。

 

アレントの趣旨は、デカルト以降「自分以外」は疑いの対象となった中で、「自分」という唯一の確かなものと「世界は進歩しているはずだ」という軽率なオプティミズムによって人間は生きることを選択したということである。

 

 

 

 

 

今や「生きていくことが何よりも大事」というイデオロギーはそれ以外の価値観が過去にあったことすらも思い出せないほどに我々を縛っている。

 

 

「あんた!仕事辞めて明日からどうやって食べていくの!」

「あら。公務員になったのね。お母さん安心した」

 

 

子供の頃から親にこの言葉を刷り込まれたからこそ、なりたい職業ナンバーワンは「公務員」なのである。

 

 

 

ただ、過去にはこの「金のために」働くという考え以外があったことをここで伝えておきたい。

 

 

例えば、新渡戸稲造の『武士道』などを読んでみるとわかるが、昔の武士はいかに貧窮しても「労働」(金のために働くこと)を拒否した。

 

 

彼らにとって武士としての「高貴さ」を守ることが「生きること」を上回っていたからに他ならない。

 

 

当時の生活記録を見ると「おまえ働けよ笑」と我々は思ってしまうであろうが、それは完全に近代以降の偏見に蝕まれているからであり、断じてその労働を是とする考えは「正解」ではない。

 

 

 

 

武士が特例だと思われると困るので、それ以外の例もあげておこう。

今は死滅しつつあると言ってもいい本当の意味での「職人」もそうだった。

 

 

彼らは、「生命過程」を維持することではなく、制作物を通して「世界を創造すること」を目指していた。ただ、産業革命以降本当の意味での「仕事人」は壊滅したため、我々にはそのような人種がいたことすらとてもではないが信じられない。

 

永続性、安定性、耐久性という、世界の製作者である<工作者>の理想は、豊かさという、<労働する動物>の理想の犠牲となった。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 


2.消費のために生産をするのか。生産のために消費をしているのか?

今の話について少し見方を変えよう。ただ、こちらはちょっと小難しいので読み飛ばしてもらっても構わない。

 

というのも我々の意志を超越したところにある現象の俯瞰的考察になるからである。

 

 

 

よく政治家が「消費を増やさなくてはいけない」と言う。

 

そして、そこに関して「どうやって消費を増やすか」を色々な角度から議論される。

あなたもこういったテレビ番組や雑誌、ネットのニュースを見たことがあるだろう。

 

 

 

ただ、あれに対して、「そもそもなぜ消費は増やさなければならないのか?」という問いを投げかける人があまりにも少ないと思わないだろか。

 

 

ではなぜその疑問を投げかける人があまりにも少ないのか?

その理由は、先ほど同様、近代が生み出した偏見に蝕まれているからである。

 

 

一言で言えば、「生命の再生産」には「労働」が必要なのはすでに述べたが、その「労働」を継続的サイクルにするためには「消費」によって世の中を常に破壊し続けなくてはならないからである。

 

私たちは、自分の周りにある世界の物をますます早く置き換える欲求にかられており、もはや、それを使用し、それに固有の耐久性に敬意を払い、それを保持しようとする余裕をもっていない。私たちは、自分たちの家や家具や自動車を消費し、貪り食ってしまわなければならないのである。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 

これが「なぜ働くのか」という話に帰ってくる。

我々は「社会の豊かさ」という終わりなき抽象概念の円滑過程に組み込まれたがゆえに消費を強制され、破壊を行うことで労働を継続させているのだ(働かざるをえないのだ)

 

*「内在的需要を喚起する」というアホみたいな言葉がマーケティング界隈で流行っているがあれは「無理やり不必要なものを消費させる」ということに他ならない。

 

3.何かがおかしいと思わないか?

「社会を豊かにしよう」という善意に満ちた悪魔は我々の病気を深刻化させ続けている。

 

 

(あらゆる個人を犠牲にしてでも)「社会を豊かにしよう」というのがこの抽象概念の正体なのだが、(誰もがみんなが幸せになるために)「社会を豊かに」しようと多くの人が考え続けている。

 

 

「子供が寒そうだと思ってカイロを背中に入れたら子供が死んだ」という事件に似ている。

 

 

 

「善意が最悪の結果につながる」ということのまさに典型的な例なのだが、もう取り返しがつかないかもしれない。

 

 

なぜ働くのか?

 

「生命を再生産するため」

「社会によって代謝されるため」

「身の回りのものを置き換える衝動に駆られているため」

 

 

あまりに恐ろしすぎる回答である。

だが、このことを否定できる人がどれほどいようか。

 

 

 

おもしろき事なき世を面白く

 

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