私は高杉晋作

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私は高杉晋作

頭がおかしいと言う人が「頭がおかしい」

毎日の仕事がつらいのに働く理由とは?

この記事を書いたのは日曜日夜なのだが、日曜の夜というと多くの人たちが明日から始まる日々を細目で想像しながら陰鬱なひと時を過ごしているかもしれない。

 

 

具体的には

 

「毎日仕事していてもつまらないなあ」

 

仕事ってつらいだけ」

 

「俺が働いている理由ってなんなんだろう?」

 

といった感情が湧いてくるのではないだろうか?

 

 

私は、随分と前からこの感情に問題意識を持っているのだ。

 

 

「なぜこんなに多くの人がつまらないものに人生のほとんどを空費せざるをえないのだろうか」と。

 

www.shinsaku-takasugi.com

 

以前、それに対する一つの示唆となるような記事を『人間の条件』をソースに書かせていただいた。

 

今日は、上記事の続編として別の角度から「つまらない仕事「つらい仕事」に空費せざるをえない人間たちの背景について書いてみた。

 

  1. 「神の死」があなたの「仕事がつまらないけど働く理由」の始まり
  2. 向上心のある人であろうと泥沼にはまる社会
  3. 毎日の仕事がつらいしつまらないのに働く理由とは

 

1.「神の死」があなたの「仕事がつまらないけど働く理由」の始まり

あなたが毎日「仕事がつまらない」「仕事がつらい」と言っているのにそのループから抜け出せない理由は近代以降「神が死んだこと」と深い関わりがある。

 

今日、「神を信じている」と言った場合、「気持ち悪い」「やばい人」という扱いを受けることが一般的とも言えるくらいに多くの人は神の存在を信じていない。

 

 

この「神の死」をもたらしたのが有名なルネ・デカルトである。

 

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デカルトといえば、「我思うゆえに我あり」で有名だが、あのコンセプトは平たく言うと「あらゆるものは疑いうる。だが、疑っている自分だけは疑い得ない」というものだ。

 

 

デカルトに始まる近代哲学は今まで触れてこなかった「神」へ疑いを持ちその存在を殺したのだ。

 

 

「神が死んだくらいでどうって言うんだよ」と現代に生きる我々は思うであろう。

 

 

 

その気持ちは私もわかる。

ただ、アレントによれば「神が死ぬということ」は「人間が不死ではないこと」を意味することにつながるのだ。

 

そしてそのことを人間は察知した瞬間「労働する動物」に変身するのだ。

 

 近代になって、世俗化の過程が進み、デカルト的懐疑が必然的に信仰を奪ったため、個体の生命は、もはや不死ではなくなり、少なくとも、不死の確かさを失った。このようなことが起こらなかったとしたら、<労働する動物>の勝利は決して完成しなかったであろう。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 

神を失ったことで、イメージとしては人間は「自分でなんとか生きなさい」というふうに突き返されてしまった。

 

 

そして、あらゆる物事に優先して労働が勝利を果たした。

 

 

ここでおそらく「自分で生きていかなくてはならないこと」(神が救ってくれないということ)と「労働の勝利」にロジックを見いだせない人がいるかもしれないので、アレントの述べた「労働」の特徴の1つを補足的にひとつ引用しておきたい。

 

空虚さにもかかわらず、強い緊迫感から生まれ、何物にもまして強力な衝動の力に動かされている。なぜなら生命そのものがそれにかかっているからである。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 

ここで、アレントが言いたいのは「労働」をする動機は「つまらない」「つらい」という感情など関係なく、とにかく生命に紐付いているのだからやるしかないという切迫感が最大のものだということだ。 

  

2.向上心のある人であろうとも泥沼にはまる世の中

私はブログでしばしば以下のような人物を叩いてきた。

  • 「息子の笑顔を見ること」が生きがいの人間
  • 「飲み会も仕事のうちだから」という人間
  • 「平日は激安居酒屋、土日はゴルフ」という人間

・・・

 

 

本題ではないのでこれ以上あげないがいわゆる向上心に乏しく「堕落した人間」である。もう叩き疲れたのでこれ以上は書かない。

 

そしてこれと対極に位置する「向上心のある人間」は賞賛される。

例えば以下のような人だ。

  • 隙間時間にビジネス書を読む
  • 啓発セミナーに行く
  • 金をたくさん稼ごうとビジネスを始める

 

 

実は、私も1年ほど前に気が狂ったようにビジネス書や自己啓発書を読んでいたのでこれから書くことはあまり胸を張って言える内容でもないのだが、実は、これらの人もある偏見に蝕まれているのだ。

 

 

おそらく今あげたような向上心のある人というのは「堕落した人間」と一見全くことなるように見えるであろう。私も長きわたってそう思っていた。

 

しかし、アレントによれば、双方とも実はある同じ偏見からスタートしているのだ。

 

いずれにせよ、近代人は来世を失った時、その代わりに、この世界を手に入れたのではなかった。そして厳密に言えば生命を手に入れたのでもなかった。彼らはただ、生命に投げ返され、内省の閉鎖的な内部志向性の中に投げ入れられたのである。

ハンナ・アレント『人間の条件』

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ここに書いていることがちょっと難しく見えるかもしれないので私なりに咀嚼してみようと思う。

 

 

「堕落した人間」も「向上心のある人間」も神を失い、すべての事象が「自分」という閉鎖的な箱に突き返されあらゆる周りのものが信じられない孤独感におかれているという点で同じなのだ。

 

 

ただ、同じ始まりから歩む道が二つに枝分かれしているだけなのだ。

 

 「向上心のある人」は「自己利益の最大化」に腐心する。

 

 

一方で、「向上心のない人間」「堕落した人間」たちは、どうなるかというと「自己利益」さえも見失い「労働」に積極的に巻き込まれ運動の「過程」を漂うように人生を終えていく。

肝心な点は、今や人々が行っていた活動の最後の痕跡、つまり自己利益に含まれていた動機さえ消滅したということである。残されたものは「自然力」、つまり生命過程そのものの力であって、全ての人、すべての人間的活動力は、等しくその力に屈服した。この力の唯一の目的は・・動物の種としての人間の生存であった。個体の生命を種の生命に結びつけるのに、それ以上に高い人間能力はもはや何一つ必要ではなかった。個体の生命は生命過程の一部となり、労働すること、つまり自分自身の生命と自分の家族の生命の存続を保証することだけが、必要であった。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 

長くなったので、まとめたい。

 

現代の「向上心のある人」「向上心のない人」は自己利益の追求に対する熱意のみでその相違が決定する。

 

前者が「ビジネス書を読む人」をイメージしてもらって構わない。

後者はもちろん「ユニクロ人間」だ。

 

 

しかしながら、アレントの言葉を借りれば、この分かれ道に入る以前の段階で両者とも底なし沼に足を突っ込んでいる状態なのだ。

 

平たく言えば、両方とも病気なのだ。

 

 

ここに気づいたことがアレントが天才たる所以だ。

 

世間的に内省に長けた「偉大」「秀才」と呼ばれる人たちのはまった沼も見つけ出したところに彼女の洞察の深さが見て取れる。

 

デカルトと同じようにホッブズの場合も、「主要な推進力は懐疑であった。」そして自然の術によって「神が世界を造り、統治する」ように、人間が自分自身の世界を造り、支配する「人間の術」を確立するのに選ばれた方法は、やはり内省であり、「自分の内部を読むこと」である。

ハンナ・アレント『人間の条件』

 

3.毎日の仕事がつらいしつまらないのに働く理由とは

もう読者諸氏はそろそろ本題を忘れ始めている頃かもしれないが、ここでようやく戻ってくる。

 

今あなたは毎日の仕事つらいし、つまらないのにそのループから抜け出せないでいる。

 

その理由はもちろん神(信仰対象)を失ったからに他ならない。

それゆえに「自分」という現存在以外何ら寄る辺とするものがない。

 

 

 

その「自分」は自らの手で維持しなくてはならないために、何も身動きが取れない。

 

欲望を満たそうとするか「労働」という円滑な過程に組み込まれることを本望とするかしかないのだ。

 

  

 

 

「あらゆるものは疑いの対象であり、信じられるのが現に思考している自分だけだ。」

 

 

デカルトが近代の初めに突き詰めたこの「我思うゆえに我あり」は現代人を今日も捉えて離してくれない。

 

 

あなたは明日もし「仕事がつらい」「仕事がつまらない」という相談を受けたら是非「それはデカルトが生み出した偏見のせいだよ」と答えてほしい。

 

 

おもしろきことなきを世を面白く

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